私のカフェができるまで Vol.14
2008年 07月 03日
○3ヶ月目には倒れます!
「お店をオープンして、大変だったことは何ですか?」
よく聞かれる質問です。
そりゃーもう、イチに体力、二に体力、です。
よく「飲食店は肉体労働」と言われますが、こんなにキツイとは思ってませんでした!
旅館の仲居さんをやったこともあります。真夜中働くボランティアもやったことあります。でも、もー、生まれてこのかた、こんなに働いたことはありません!(笑)。
「飲食店のオーナーは、3ヶ月目に倒れる」
というセオリーもあるそうですが、私もある晩、倒れました!
それまで、まだ定休日がなく、朝の9時から夜の12時まで、立ちっぱなしで店にいましたから、無理もありません。
むくみあがった私の足を見て、母は「このままじゃ腐っちゃうわよ!」と脅かしました。体重は5キロ近く落ちました。
そして、朝、枕から頭が上がらなくなりました。
それで、一方、売り上げは・・というと、20席足らずのカフェですから、大層なことはありません。しかも当時ですでに、3~5人のスタッフを抱えていました。
私のお給料はというと、これまた「これまでで、一番低い時給」です(笑)。
よく「これだけの時間を、もしよそで働いていたら、私はお金持ちになっちゃうのになぁ」なんて思いながら働いていました。
それでも、飲食店をやる魅力はどこにあるのか・・。
「食べ物を通して、人を幸せにしたい!」というのが、私の長年の夢でした。
○幸せな食べものとは・・
お店をオープンする2年前。私は心身ともに疲れ果て、落ち込んでいる時期がありました。その日も、病院の帰りで、ぐったりしながら友人と居酒屋にいました。
そこで、なにげなく口に運んだ「肉じゃが」のことが、いまでも忘れられません。
それは、どこにでもある普通の肉じゃがでした。でも、口にいれたとたん、舌の上でほろほろと崩れて、何ともいえない甘さが、じんわりと舌に染みこんでいきました。
その瞬間、こらえていたものが堰を切ったように、涙が溢れ出てきたのです。一緒にいた友人は、私が突然泣き出したので、びっくりしたことでしょう。でも、私はその切ない甘さに酔って、しみじみ泣いていました。
偶然、その後ヒットした日本映画「かもめ食堂」にも、似たような場面がありました。
心に傷を負って、フィンランドにやってきた女性が、主人公サチエの家で、夕飯をご馳走になります。それは普通のご飯とおかずという日本食でしたが、ご飯を一口、噛み締めた女性は、ほろりと涙を流すのです。あぁ、きっと彼女の心の緊張も、この一口のご飯でほどけていったのでしょう。
人によって、それぞれのシチュエーションで、食との出会いや感動があります。
特別おいしいものではなくても、感動することもあれば、高級グルメでも、心に響かないことはあります。
「食の幸せ」とは、いったいどんなものなのでしょう。究極では「家族で囲む食卓」かもしれません。
私が、お店を開くとき、「パンケーキ」を選んだのは、あの丸い素朴な食べ物が、子供から大人まで、世界中で愛されているものだから。そして、子供のころ読んだ、絵本の中の憧れの食べ物だったから・・でしょうか。
voivoiをオープンして1、年以上たちましたが、ある日、スタッフがこんなことを言いました。
「ソファ席のカップルのお客様、最初けんかしながら入ってきて、険悪な雰囲気だったんです。それが、パンケーキを持っていったら、彼女の方が急ににっこりして、”パンケーキって、なんだか幸せな気持ちになるよね”って、彼に言ったんです」
--その後は、もう聞かなくても分かりますね。そのお二人、きっと仲直りしたに違いありません。
(つづく)
※この記事は、「カフェ&レストラン 6月号」(2008年)に掲載させていただいたものです。
「お店をオープンして、大変だったことは何ですか?」
よく聞かれる質問です。
そりゃーもう、イチに体力、二に体力、です。
よく「飲食店は肉体労働」と言われますが、こんなにキツイとは思ってませんでした!
旅館の仲居さんをやったこともあります。真夜中働くボランティアもやったことあります。でも、もー、生まれてこのかた、こんなに働いたことはありません!(笑)。
というセオリーもあるそうですが、私もある晩、倒れました!
それまで、まだ定休日がなく、朝の9時から夜の12時まで、立ちっぱなしで店にいましたから、無理もありません。
むくみあがった私の足を見て、母は「このままじゃ腐っちゃうわよ!」と脅かしました。体重は5キロ近く落ちました。
そして、朝、枕から頭が上がらなくなりました。
それで、一方、売り上げは・・というと、20席足らずのカフェですから、大層なことはありません。しかも当時ですでに、3~5人のスタッフを抱えていました。
私のお給料はというと、これまた「これまでで、一番低い時給」です(笑)。
よく「これだけの時間を、もしよそで働いていたら、私はお金持ちになっちゃうのになぁ」なんて思いながら働いていました。
それでも、飲食店をやる魅力はどこにあるのか・・。
「食べ物を通して、人を幸せにしたい!」というのが、私の長年の夢でした。
○幸せな食べものとは・・
お店をオープンする2年前。私は心身ともに疲れ果て、落ち込んでいる時期がありました。その日も、病院の帰りで、ぐったりしながら友人と居酒屋にいました。
そこで、なにげなく口に運んだ「肉じゃが」のことが、いまでも忘れられません。
それは、どこにでもある普通の肉じゃがでした。でも、口にいれたとたん、舌の上でほろほろと崩れて、何ともいえない甘さが、じんわりと舌に染みこんでいきました。
その瞬間、こらえていたものが堰を切ったように、涙が溢れ出てきたのです。一緒にいた友人は、私が突然泣き出したので、びっくりしたことでしょう。でも、私はその切ない甘さに酔って、しみじみ泣いていました。
偶然、その後ヒットした日本映画「かもめ食堂」にも、似たような場面がありました。
心に傷を負って、フィンランドにやってきた女性が、主人公サチエの家で、夕飯をご馳走になります。それは普通のご飯とおかずという日本食でしたが、ご飯を一口、噛み締めた女性は、ほろりと涙を流すのです。あぁ、きっと彼女の心の緊張も、この一口のご飯でほどけていったのでしょう。
人によって、それぞれのシチュエーションで、食との出会いや感動があります。
特別おいしいものではなくても、感動することもあれば、高級グルメでも、心に響かないことはあります。
「食の幸せ」とは、いったいどんなものなのでしょう。究極では「家族で囲む食卓」かもしれません。
私が、お店を開くとき、「パンケーキ」を選んだのは、あの丸い素朴な食べ物が、子供から大人まで、世界中で愛されているものだから。そして、子供のころ読んだ、絵本の中の憧れの食べ物だったから・・でしょうか。
voivoiをオープンして1、年以上たちましたが、ある日、スタッフがこんなことを言いました。
「ソファ席のカップルのお客様、最初けんかしながら入ってきて、険悪な雰囲気だったんです。それが、パンケーキを持っていったら、彼女の方が急ににっこりして、”パンケーキって、なんだか幸せな気持ちになるよね”って、彼に言ったんです」
--その後は、もう聞かなくても分かりますね。そのお二人、きっと仲直りしたに違いありません。
(つづく)
※この記事は、「カフェ&レストラン 6月号」(2008年)に掲載させていただいたものです。
by pancakemama2
| 2008-07-03 00:56
| voivoiができるまで(連載)